社交ダンスを始めるなら、優しい先生に習いたいと思うのは自然なことです。わざわざ怖い先生を探さなくてもいいですよね(笑)。

ただ、先生が優しいかどうかだけで教室を決めるのは、少しもったいないかもしれません。僕が大切だと思うのは、その先生の性格と同時に、「その教室では何が普通なのか」を見ることです。

優しい先生でも、教える内容は環境で変わる

人は、いる環境によってかなり変わります。僕がそれを強く感じたのは、中学生の時の卓球部でした。

僕の中学校は、毎年、県大会で2位か3位になる学校でした。ただし、下から数えての話です(笑)。つまり、かなり弱い部でした。

当時の顧問は数学の先生で、礼儀作法にも厳しい、少し古風な先生でした。「ボールを大切にしなさい」と言われ、僕たちもきちんと練習しているつもりでした。それでも勝てないので、県の上位に行く学校は、よほど特別な猛練習をしているのだろうと思っていたんです。

ところが、僕が3年生になった時、顧問が変わりました。前の学校で県のトップまで選手を育てた先生です。どんな鬼コーチが来るのかと思ったら、意外と優しい先生でした(笑)。

でも、やることはまったく違いました。

同じ練習でも、「普通」が変わると結果が変わる

まず、ボールをたくさん買いました。前の先生は「ボールを大切にしなさい」という方針でしたが、新しい先生のところでは、ボールがたくさんある。どんどん打って、練習を止めません。

卓球マシンも使いました。ものすごい回転の球が飛んでくるので、最初は「こんなもの、中学生が使うものじゃない」と思っていました。でも、毎日使っていると、それが普通になっていきます。

先生は、飛んでくるボールの印を見ろと言いました。そんなもの見えるわけがないと思っていたのに、続けていると本当に「回転している」と分かるようになりました。

球拾いも、ただ拾えばいいわけではありません。ボールが来たらすぐ拾う。ぼんやりして後ろへ転がしたりすると、先生がそのボールをラケットでさらに遠くへ飛ばします(笑)。そして、走って取りに行かされる。球拾いの時も、自分がコートに立って打っているつもりで真剣にやれ、と言われました。

学校の周りを5周走る練習も、それまではみんなで仲良くジョギングしていました。新しい先生は一言、「競争しろ」。同じ5周なのに、急に全員が本気で走り始めました。

腕立て伏せ20回もありました。数字だけ聞けば大したことがなさそうですが、先生の掛け声がとても遅い。一回がなかなか終わりません(笑)。しかも、誰か一人でも途中でつぶれたら最初からです。「20回」という数字に、すっかりだまされました。

道具が変わる。練習方法が変わる。基準が変わる。そして、何が普通なのかが変わる。

僕たちは、3年生になって突然、運動神経が良くなったわけではありません。同じ僕たちです。それでも先生が来てから3か月ほどで、県の優勝候補とかなりいい勝負ができるようになりました。僕のダブルスも、負けはしましたが、本当に僅差でした。

その時、僕は「この先生があと一年早く来てくれていたら」と思いました。実際、次の年の後輩たちは県のトップまで進みました。

上位の学校が、僕たちの知らない秘密の練習をしていたわけではありません。やっていること自体は、そこまで特別ではない。違ったのは、一つ一つのやり方と、何を普通にするかでした。

社交ダンス教室では、何を前提にしているのかを見る

これは、社交ダンスの先生や教室にも同じことが言えると思います。

競技をする人が多い教室なら、先生も競技に必要なことを教えるのが普通になるでしょう。人前で踊ることが中心の教室なら、そこに必要な準備や練習が普通になる。

一方で、初心者を中心に教えている教室なら、初心者がどこで分からなくなるのかを考え、そこから説明することが普通になります。

先生が優しいかどうかは、もちろん大切です。でも、それだけではなく、その先生が誰に教えることを前提にしているのか、その教室では普段どんなレッスンをしているのかを見てほしいと思います。

その教室の「普通」の中に入った時、自分はどうなっていくのか。無理なく、楽しく続けられそうか。そこを感じてみることが大切です。

優しさだけでなく、自分に合う「普通」を

中学生の頃の僕たちは、県大会で下から2位、3位になるのが普通でした。それが環境が変わると、3か月で県のトップといい勝負ができた。同じ人間でも、環境によってこれだけ変わるものです。

だから、社交ダンスの教室を見る時は、先生が優しそうかだけで判断しないでください。その教室では、初心者に何を分かってもらうことを普通としているのか。どんな練習を、どんな雰囲気で続けているのか。

「優しい先生がいいですか?」と聞かれたら、もちろん優しい方がいいと思います(笑)。そのうえで、教室の「普通」にも目を向けてみてください。そこが、自分が楽しく社交ダンスを続けていける場所かどうかを考える手がかりになるはずです。

山岡ダンススクールでも、初心者の方が分からないところから安心して始められるよう、教室の雰囲気やレッスンの進め方を大切にしています。