社交ダンスを始めたばかりの方の中には、「間違えないように」と考えるあまり、ものすごく真面目な顔で踊っている方もいます。

もちろん、一生懸命に取り組むことは大切です。でも、社交ダンスは苦しい修行をしたくて始めるものではないはずです。今回は、僕自身が競技生活を通して、遠回りしながら気づいたことをお話しします。

競技を始めて、踊りながら笑わなくなった

現役で競技をしていた頃、僕は踊っている時にほとんど笑いませんでした。というより、「笑ってられるか」と思っていたんです。

こっちは真剣に踊っている。どちらが上手いのか、今日どちらが勝つのか。それで成績が決まるのだから、ヘラヘラ笑っている場合ではない。そんな気持ちでした。

でも、最初からそうだったわけではありません。ダンスを始めた頃の僕は、楽しくて楽しくて、ニコニコしながら踊っていました。

競技を始めて、勝ち負けを意識するようになると、少しずつ変わっていきました。どうすれば上手くなるか、どうすれば勝てるか、自分の姿勢はどうか、動きはどうか、相手より上手いか。頭の中は、そんなことばかりです。

踊っているというより、自分の内面との戦いです。いつの間にか、ダンスが修行のようになっていました。

拍手と声援に追いかけられて、自然に笑っていた

そんな僕でも、すごく楽しく踊れたことがあります。あるパーティーのチームマッチで踊った時のことです。

踊り始めると、周りから拍手や声援がどんどん来ました。僕たちがフロアを進んでいくと、拍手や声援のウェーブがずっと追いかけてくるんです。

あっちへ行けば、あっちから声が来る。こっちへ行けば、今度はこっちから来る。その時間が、ものすごく楽しかった。

たぶん僕も、自然に笑っていたのでしょう。後で他の先生から、「山岡先生が笑ってるよ」と言われました。

普通なら、笑っているくらいで、わざわざ言われませんよね。それくらい普段の僕は、踊っている時に笑っていなかったということです。

でもその時は、自分たちが楽しいだけではありませんでした。周りで見ている人たちも一緒になって楽しんでいる。その空気が、フロア全体にあったんです。

上手いだけでは、見ている人をハッピーにできない

このことを本当に理解したのは、競技を引退してからでした。

もう人と勝負しなくていい。今日どちらが上か、成績がどうだと考えなくていい。外からダンスを見るようになって、ようやく気づいたんです。

上手いだけでは、見ている人はハッピーにならない。

もちろん、技術は大切です。競技であれば、上手く踊ることも大切です。でも、本当に魅力のあるダンスは、踊っている本人たちがハッピーで、見ている人までなんだか楽しくなるものなのではないかと思います。

考えてみれば、僕自身も最初はそうでした。楽しくて、ニコニコ踊っていた。それが「上手くなろう」「勝とう」としているうちに、いつの間にか忘れてしまったんですね。

引退して、人と勝負しなくてよくなって、やっと、もともとの自分を思い出したような気がします。

真剣に踊ることと、笑って踊ることは両立する

今、教室で生徒さんが、間違えないように、間違えないようにと、ものすごく真面目な顔で踊っているのを見ると、昔の自分を思い出します。

一生懸命なのは、もちろんいいことです。でも、そんなにしかめっ面をしなくてもいいんじゃないかなと思います。

社交ダンスを始めようと思ったのは、楽しくなりたかったからではないでしょうか。健康のため、人と交流するため、音楽に合わせて踊ってみたかったから。理由はいろいろあると思います。

上手くなることと、楽しむことは反対ではありません。真剣に取り組むことと、笑って踊ることも反対ではなかったんです。

自分がハッピーで、一緒に踊っている相手もハッピーで、見ている人までハッピーになる。僕はずいぶん遠回りしましたが、それが本来のダンスだったんだなと、今は思っています。

山岡ダンススクールでは、初心者の方にも、間違いを恐れて表情まで固くするのではなく、踊る楽しさを感じてもらいたいと考えています。真剣に、でも笑って。そんな社交ダンスを一緒に楽しみましょう。