人のために何かをしてあげることは、基本的にはいいことです。
ただ、自分では「相手のためにやっている」と思っていても、相手がそれを望んでいるとは限りません。これは社交ダンスでも、初心者のうちから知っておいてほしい大切なことだと思います。
良かれと思っても、相手が望んでいるとは限らない
例えば、今日はデートだとします。せっかくですから張り切って、まずフレンチ。その次はイタリアン、さらに中華。映画も見て、オペラも見て、最後は歌舞伎まで行きましょうか(笑)。
本人は「今日はこんなに楽しませてあげた」と大満足です。
でも相手は、少し疲れていて、お茶漬けでも食べて、公園をのんびり歩きながらぼーっとしたかったかもしれません。
フレンチが悪いわけではありません。オペラも歌舞伎も悪くない。問題は、相手がそれを望んでいるのかどうかです。
食べ物だって同じですよね。薄味が好きな人もいれば、濃い味が好きな人もいる。辛いものが大好きな人もいれば、少し辛いだけで無理という人もいます。
しかも、同じ人でも毎日同じとは限りません。今日は焼肉をがっつり食べたいけれど、次の日は「今日はお茶漬けでいいや」ということもあります(笑)。
好みも違うし、その日のコンディションでも違う。だから、「これをやったら喜ぶはず」と決めつけるのは、結構危ないんです。
社交ダンスでも「全部やってあげる」が負担になることがある
社交ダンスも、まったく同じだと思います。
自分はたくさんステップを知っている。だから、いろいろなことをやってあげよう。速く踊れるから、どんどん踊ってあげよう。大きく踊れるから、思い切り踊ってあげよう。
本人は全部、良かれと思ってやっているのかもしれません。
でも相手は、そんなに速く踊りたくないかもしれない。今日は少し疲れているかもしれない。まだ始めたばかりで、簡単なステップをゆっくり踊りたいかもしれません。
そこを見ないで、「こんなこともできますよ」「これもやってあげますよ」と次々に繰り出したら、デートでフレンチ、イタリアン、中華、映画、オペラ、歌舞伎まで全部詰め込んでいるのと同じかもしれません(笑)。
サービスしているつもりが、相手からしたら「もう、お茶漬けでいいんだけど」ということもあるんです。
覚えたことを全部使わなくてもいい
社交ダンスは、自分一人で完成するものではありません。相手がいるからこそ、相手との間にダンスが生まれます。
だから、自分が何をしてあげられるかよりも、「今この人は何を望んでいるのかな」「どのくらいなら気持ちよく踊れるのかな」と見ることの方が大事だと思います。
社交ダンスを始めると、どうしても「もっとステップを覚えなきゃ」「もっと上手く踊らなきゃ」と考えます。もちろん、覚えることも大切です。
でも、覚えたものを全部使わなければいけないわけではありません。できることを全部やる必要もありません。
相手に合わせて、「今日はこれくらいでちょうどいい」と選べることも、社交ダンスの大事な部分です。
相手のためにやっているつもりでも、相手のことを見ていなかったら、それは単なる「余計なお世話」になってしまうことがあります。
フレンチがいい日もある。お茶漬けがいい日もある。
大事なのは、自分が何を用意したいかではなく、目の前の相手がどうなのか。社交ダンスも、そんなふうに相手を見ながら踊れると、もっと楽しくなると思います。
山岡ダンススクールでも、できることを一方的に増やすのではなく、相手を見ながら気持ちよく踊ることを大切にしています。