社交ダンス初心者の方が「もう若くないから、今から始めるのは遅いかな」と感じる必要はありません。テレビで若い人が速く踊っているのを見ると不安になるかもしれませんが、社交ダンスでは若さやスピードだけが大切なわけではないからです。
僕が大人の方に有利だと思うのは、「相手を見る目」があることです。相手の様子を見て、少し待ち、無理に自分を押しつけない。これまでの人生で身につけてきた力が、社交ダンスでは大きな武器になります。
学生時代に憧れた、かっこいい先輩
僕は学生時代、競技ダンス部に入っていました。その頃は、スタイルがよくて踊り方が派手な先輩を見ると、「あの人かっこいいな。あんなふうに踊りたいな」と思っていたんです。
憧れた先輩の踊りを真似していると、いいところだけでなく、真似しなくていいところまで真似してしまいます(笑)。当時の僕には、どこを取り入れて、どこを取り入れないかを見分ける力がありませんでした。
鏡の前で髪型を直して、格好よく見せようともしていました。でも今になって思うのは、髪型を磨く前に「人間を磨いた方がよかったんじゃないの」ということです(笑)。これは誰かの悪口ではなく、昔の僕自身への話です。
先生の踊りを見て、社交ダンスの意味が変わった
そんな僕がダンススタジオで先生に習った時、衝撃を受けました。
僕が踊る時は、相手も自分も次のステップを覚えていて、「せーの」で動いているような感覚でした。ところが先生が踊ると、決めていないステップでも相手が自然についていくんです。
「あれ、なんでわかるんだろう」と思いました。
先生は、自分だけが上手に動いていたのではありません。相手をちゃんとリードして、二人で踊っていたんです。その時に「ああ、これが社交ダンスなんだ」と思いました。
それから僕は、自分がかっこよく踊ることよりも、相手をちゃんとリードできる人になりたいと思うようになりました。
格好よく踊る人と、一緒に踊って楽しい人は違う
もちろん、スピードや運動量では若い人の方が有利なこともあるでしょう。でも、普段の社交ダンスで、そんなに速く動く必要があるでしょうか。
社交ダンスは相手と合わせて、一緒に踊るものです。一人だけ速くても仕方がありません。自分が上手に踊ることと、相手を上手に踊らせることも別です。
これは人付き合いにも似ています。若い頃は、異性を見る時に「イケメンだ」「美人だ」と、まず見た目に目が行くかもしれません。もちろん見た目も大事ですが、大人になると、見た目だけでは長く付き合えないこともわかってきますよね。
話していて楽しい、相手のことを考えてくれる、一緒にいて安心できる。そういう内面にも目が向くようになります。
社交ダンスも同じです。格好よく踊る人と、一緒に踊って楽しい人は必ずしも同じではありません。大人の方は、これまで仕事や家庭、人との関わりを経験してきたからこそ、そういう違いに気づきやすいと思うんです。
60歳、70歳からでも、一歩を合わせるところから
もちろん、年齢を重ねれば誰でも自動的に上手くなるわけではありません。ステップは練習しないと覚えませんし、僕自身もまだまだ勉強することがあります。
それでも、「若い人みたいに動けないから社交ダンスは無理」ということではありません。今までの人生経験が、相手を見る力として生きるかもしれない。そう考えると、始めることが少し楽しみになりませんか。
社交ダンスは、相手がいるから面白いダンスです。相手がいるからこそ、自分一人では気づかなかったことにも気づけます。
60歳でも70歳でも、その面白さを味わうのに遅すぎることはありません。テレビのように速く踊る必要もありません。まずは目の前の相手と、一歩合わせるところから始めてみてください。
そこに、社交ダンスならではの楽しさがあります。若さだけではなく、相手を見る目が生きるからこそ、大人の「かっこいいヘタクソ」には味があるのだと思います。