社交ダンス初心者の方が「自分には無理かもしれない」と感じるのは、若い人が激しく踊るテレビの印象だけが理由ではありません。実際には、駅から教室まで普通に歩いて来られた方でも、「さあ踊りましょう」となった途端に足が動かなくなることがあります。

でも、それは社交ダンスが特別な運動神経を必要とするからではありません。普段は考えずにできる歩く動作を、右足、左足、体重、音楽、相手と一度に意識するためです。だからこそ、見学だけで「自分にはできない」と決めるより、体験してその面白さを味わってほしいと私は思っています。

駅から歩いてきたのに、教室では足が出ない

普通の社交ダンス教室では、テレビで見るような激しい踊りから始めるわけではありません。まず右足を出して、次に左足を出し、体重を乗せていく。言ってしまえば、普通に歩くのと同じです。

ところが、実際にやってみるとこれができないんです(笑)。駅から教室まで歩いて来られたのに、左足の次は右足のはずが、なぜかまた左足が出ようとする。普段なら考えずにできることを、頭で一生懸命考えた途端にできなくなってしまうんです。

たとえばチャチャチャのロックは、足を後ろにかける動きです。見ていると「それくらいできるでしょう」と思うかもしれません。でも実際にやると、「あれ、どっちの足をかけるんだっけ」と迷ってしまう。

ワルツの基本にある、足を揃える動きも同じです。ただ足を揃えるだけに見えても、揃えた瞬間に体重が右にあるのか左にあるのかわからなくなり、次の一歩が出せなくなる方がいます。

相手と音楽が加わると、頭の中は大渋滞

一人で動くなら、まだ考える余裕があります。社交ダンスには相手がいるので、目の前の人を気にしながら、自分の足も見たくなる。そこへ音楽が聞こえ、次のステップも考えなければいけません。

「何から先に考えればいいんだろう」と、頭の中は大渋滞です。そして、運動した汗というより、ちょっと変な汗をかくこともあります(笑)。

でも私は、これが社交ダンスの面白さだと思っています。体験レッスンに来た方が、「自分にも、こんなにできないことがあるんですね。でも楽しかったです」とおっしゃることがあります。私は、とてもいい感想だなと思います。

できないことを面白がれるのが、体験のよさ

大人になると、できることはだいたい決まってきます。毎日の生活も、慣れたことの繰り返しになりがちです。そんな中で、ある日突然、右足と左足が交互に出ない自分に出会う。これは、なかなかない発見ではないでしょうか。

しかも、最初はできなかったことが、二回目には少しできるようになり、三回目には音楽に合うこともあります。その小さな変化がうれしいんです。

「体験に行って、みんなについていけなかったらどうしよう」と心配する方もいるかもしれません。でも、最初からついていけたら、来なくてもいいくらいですよ(笑)。できないから習いに来るんです。初めてなのですから、できなくて当たり前です。

できないからといって、怒られるために教室へ行くわけではありません。できないことを笑いながら、少しずつ覚えていけばいい。私は、体験に来た方に「あれ、意外と難しい。でも、なんだか面白い」という感覚を味わってほしいと思っています。

見学だけで決めず、自分の足で試してみる

社交ダンスは、見ているだけだと簡単そうに見えてしまいます。本当の面白さは、自分の足でやってみないとわかりません。

最初の一日に、きれいに踊れなくても大丈夫です。駅から普通に歩いてきたのに、教室で足が動かなくなる。その不思議な体験を楽しめたら、最初の一日は十分成功だと思います。

社交ダンスに興味があるなら、見学だけで「自分には無理」と決めてしまうのはもったいないですよ。できないことが一つ見つかったら、それだけ新しい楽しみが見つかったということです。まずは体験レッスンで、自分の足を動かしてみてください。